富士山東奔西走(前編)

富士山は日本人の憧れ。葛飾北斎の富嶽三十六景は海外でも人気がありますが、江戸時代まではフジヤマと発音されていたそう。私も富士山には強い憧れを抱いており、数少ない上京の折、飛行機から見下ろしたり、わざわざ名古屋で降りて東海道新幹線から見上げたりして興奮したものです。憧れついでに一念発起して登頂に成功したものの、逆に近づきすぎると富士山っぽい姿は見られないので、富士は登る山じゃなくて遠くから愛でる山だなと痛感したものです。憧れがさらに奇跡を呼び、最寄駅から富士山が拝める地に引っ越すことになりましたが、それでも見られる日は年の半分くらいで、特に富士山周辺の雲行きは全く予想できず、写真を撮りに麓の河口湖あたりまで赴いても、雲や霧に覆われて全く見えない日が何度もありました。どうしても条件の良い富士山を撮りたいと思い、天候調査やライブカメラ確認、日常的に富士山の写真を撮っている方々のフォロー、撮影場所のリサーチなどを日々こなしつつチャンスをひたすら待っておりましたが、ふと流れてきたチラシで、本栖湖リゾートのダイヤモンド富士撮影会を知りました。

 ダイヤモンド富士とは富士山の頂上に太陽が乗っかる現象で、日の出と日の入りのタイミングで見ることができます。日の入りは傾きつつある太陽を追いかけることである程度着地点を絞ることができるのですが、背後から昇ってくる日の出の場合は経験や観測によるデータが必要。チラシにはその貴重なデータがばっちり記載されており、早起きさえできれば憧れのダイヤモンド富士を撮影できそうな感触を得られました。先日山中湖で日没のダイヤモンド富士撮影に2回挑戦したものの、1回目はロケハン不足で大幅に左へずれて、2回目は頂上の雲が切れず光芒を残せず。撮りやすいのは日の出かなぁと思いつつも、晴れ予報であっても朝だけ雲が掛かって撮影できないことも多いので、とりあえず一か八かの博打を打つことに。直近で行けそうな日は12/4でしたが、ここ数日仕事が忙しく、帰宅したら食事も取らずすぐ寝落ち、深夜2時ごろ起きて事務作業するサイクルでしたが、逆にそれならば早朝出発も難なく行けるかと思いきや、興奮も影響したか撮影前日に限ってなかなか寝付けず、結局3時間仮眠して朝4時の出発となりました。

 さすがに高速道路はガラガラでしたが、イベント開始後初の土曜日とあってか、05:30に現地へ着いたらすでに10台ほどの車が開門待ちで路肩に列を作っていたため、私も撮影装備を準備しつつ並んで待ちます。チラシでは朝07:00開門という事でしたが、管理人さんが気を利かせてか06:00に開門して下さったので、駐車料¥1000を払ってとりあえず撮影ポイントへ三脚設置に走りました。予想よりも小さな竜神池はこの時期芝も養生していて、撮影目的だけのオープンのような印象でしたが、湖畔に至る誘導路が整備され、凍結防止の噴水(日の出1時間前に停止!)も稼働。さすが都会向けのサービスは細部まで配慮が深いですね。お陰で次第に白みゆく空と富士山が綺麗に写り込んだ水鏡も完成し、雲ひとつない極上の撮影環境が整ったのであります。

 早めに到着したおかげで珍しく時間に余裕があり、フルサイズ一眼レフのPENTAX K-1 markⅡを三脚に据え、DFA15-30mmF2.8の広角ズームレンズ、KANIのソフトグラデーションフィルターをセット。スタンドポッドにはSONY RX10M4を設置して、4K動画をセッティング。首からRICOH GR3を下げて予備機とし、万全な体制を整えつつ日の出を待ちます。湖畔には50名ほどのカメラマンが待機し、日の出直前に慌てて駆け込む方にはすでに三脚を立てる場所がないほどの人気ぶりでしたが、常連のおじさんとダイヤモンドが真ん中に出現するポイントに付いて雑談したり、混雑の様子をスナップするなど、待ち時間が退屈だと思ったことは一度もありませんでした。背後の山々が明るくなり、富士山頂に湧いた絹雲が淡雪のようにキラキラ溶けていく幻想的なシーンから、07:45に突如山頂に現れる灯火。小さな光の点が加速度的に膨張して、太陽エネルギーが私たちを包みます。もはや荘厳以上の何者でもない非現実的なステージは、インターバル撮影の規則的なシャッター音だけが響く世界。毎日のルーティンである只の日の出が、2度と来ない今日の朝を彩る。心境的にはもはや「ぽかーん」である。またもやビギナーズラックで、とんでもないシーンに立ち会ってしまいました。

 ほのかな光は数分で直視できないほどの逆光へと変貌し、ダイヤモンド富士というテーマにおいては撮影タイミングが終了。充実の満足感を反芻しつつ機材を撤去して、車へ引き上げました。さっそく良さそうなデータを携帯に転送してレタッチしてみたら、なんと水面に反射している光芒の周りに数多くの埃が!!そういえばフィルターを神経質に何度もブロワーかけてる方がいらっしゃったのですが、フィルターってあれほど神経質に管理しなければならなかったのか!なにせフィルター使用歴2回目のため、そこまで気が回らず折角の極上のステージを台無しにしてしまった後悔で、違った意味で「ぽかーん」。脱力感を覚えつつも、まぁレタッチで消せばいいやと慰めましたが、実はこの埃のようなものは水中の微細な泡が反射したもので、動画にもしっかり写っていたので撮影に関しては何の落ち度がなかったことが帰宅後に判明。しかもほぼ同じ構図の写真を以前からフォローしていた富士山撮影の第一人者橋向真氏がアップされていて、なんと憧れの方の隣席で撮影していたことが分かりました。まさにあの場所は、選ばれた(選んだ?)人だけのステージだったのかもしれません。

 しかも今日はこれで終わりではなく、さらにとんでもない冒険が始まるのですが、続きは来週!

この記事を書いた人:

プロフィール

2003年に個人事業を開業。

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パソコン・ネットワーク環境構築、保守等
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